声明「新型コロナウイルスとの戦い」
一般社団法人日本医学会連合声明
新型コロナウイルスとの戦い
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界的拡大が続いています。私たちの生活を豊かにした世界経済の発展、そしてその原動力となったグローバリゼーションの陰に潜む脅威を、今人類は目の当たりにしています。4月8日には、遂に7都府県に緊急事態宣言が発出されました。感染者、特に重症感染者の苦しみは著しいものがあり、感染していない人々の毎日の生活も一変してしまいました。これに対して、感染抑止策を徹底しながら感染者の治療を行い、医療供給体制の限度を超えた「医療崩壊」の危機に立ち向かうと共に、可及的速やかに治療薬及びワクチンの開発によって感染を制御するための努力と戦いを全国の医学・医療関係者は日夜行っています。
日本医学会連合は、医学・医療のあらゆる分野をカバーする学術団体であり、136の学会が加盟しています。現在、それぞれの学会が各自の立場からCOVID-19 に対してどのように対処するかに関する発信を行っています。医学会連合ではそれらを、「ウイルス感染症について」、「感染経路と防止対策などについて」、「基礎疾患をお持ちの皆様に」、「お子様をお持ちの皆様に」などに分けてリストアップし、ウエッブサイトで公開していますので(https://www.jmsf.or.jp/info_covid19_newslist.html)、ご参考にしていただきたいと思います。
まずは、この COVID-19 を終息させることが私たちに課せられた目標であることは論を待ちませんが、たとえ終息したとしても私たちの戦いが終わったとは言えません。新興感染症の75%は動物由来で、野生動物の生育地の開発や気候変動などによる環境の悪化と関係していることも示されてきています。従って生態系全体、あるいは地球全体への視点を持つとともに、今回なぜ世界的にこれほどの感染拡大が起きてしまったのか、どうすれば防げたのか、完全に防げなくともどうすれば苦しむ人々をもっと少なくできたのか、原因を検証するとともに、後戻りできないグローバリゼーションの中で次に起こるかも知れないパンデミックに対策を立てていくことが求められます。
日本医学会は2009 年春に流行した新型インフルエンザ(A/H1N1)パンデミックに学び、感染症対策を強力に押し進めることのできる疾病予防情報センター(日本版CDC)の創設を2013年4月に内閣総理大臣に対して要望しました。残念ながら、設置はこれまで実現せず、今回の COVID-19 への対応に供することはできませんでした。
新興ウイルス感染症に対抗するためには、ウイルスを知り、感染メカニズムを知り、感染症発症メカニズムを知ることが必要です。まずはCOVID-19 をあらゆる側面から徹底的に分析・検証し、これからも繰り返して起こるかもしれない新興感染症に対して感染爆発を防ぐための対策を練り上げることが必要です。合わせて、今回浮き彫りとなった我国の医療供給体制の問題についても対策が必要です。日本医学会連合は、基礎医学・社会医学・臨床医学をカバーしており、あらゆる視点から有効な感染症対策のあり方に関する検討を進めます。対応策がまとまりましたら、意を同じくする学術団体とも連携し、具体的な感染症対策を進めるための方策を提案する所存です。
2020 年4月10日
一般社団法人日本医学会連合
会長 門田守人
一部追記(4月13日)