活動報告

第4回社会医学若手フォーラム開催のご案内

盛況にて終了いたしました。
ご参加のいただいたみなさまありがとうございました。

第4回社会医学若手フォーラム 参加者募集

 2022年3月4日(金)17時30分より、第4回社会医学若手フォーラムをWeb開催します。
 がんは、早期発見や治療の進歩に伴い、生存率は改善傾向にあります。その結果として、治療と就労の両立という課題が社会の中で広く認識されるようになりました。他方、早期の発見と治療が重要であるにもかかわらず、コロナ禍で顕在化したように受診の遅れの問題もあります。今回は天笠志保先生(東京医科大学)に身体活動とがんの疫学について、大城真理子先生(沖縄県立看護大学)に乳がん受診の遅れについて、実例を交えながら最新の知見をお話しいただきます。演者・発表内容の詳細は本ページ下部をご参照ください。
 本フォーラムは参加無料です。
 参加登録フォーム https://forms.gle/5gnMSzC5jSKXaoGh6 よりお申込みください。

開催趣旨

 日本医学会連合社会部会の若手リトリート2019は、分野の異なる加盟団体からの参加者により、活発で積極的な会合が開催できました。引き続き、2022年度に若手リトリートの「年会」を開催予定です。それと同時に、限られた参加者による「年会」だけでなく、「持続的に」、「開かれた」交流会を開き、社会部会研究者を中心とした研究ネットワークを拡大していくことは、極めて有意義なことと思われます。
 社会医学は、医療を中心とした社会の様々な現場から、研究室・実験室で行う健康・医学に関わる社会医学の基礎研究まで、多様な研究分野から成り立っています。それぞれの持ち場において活動する研究者が、各自の問題意識を互いに共有し、協働することで、より大きな成果が期待される研究領域です。同時に、こうした「若手」の活動に共感する「年長」研究者との交流も極めて有用です。

 そこで、若手リトリート2019に集った参加者を軸として、相互理解を深め、医療・健康上の課題解決を志す他の多くの仲間を増やして共同研究を促進していくために、また、「社会医学」の若手リトリートの研究ネットワーク形成という当初の目標を目指すことのために、社会医学若手フォーラムを開催することとなりました。
 その第1回を2021年6月26日、第2回は8月27日、第3回は12月4日にWeb開催しました。各回数名の講演についての活発な意見交換が行われ、その後の参加者同士の交流会でも新しいつながりができました。
 第4回は3月4日を予定しています。今回も新しい刺激を受ける良い契機になることを期待しています。ぜひ周りの方々にもご案内ください。人々の命と健康に関わる研究者の幅広い交流と共同研究促進を志す多くの方々のご参加をお待ちしております。

開催概要

日本医学会連合 第4回社会医学若手フォーラム
日時 2022年3月4日(金曜日)17:30~19:30
場所 オンライン(Zoom)
対象 社会医学若手フォーラムの趣旨に賛同する研究者
内容 登壇者2名による自己紹介・研究紹介・質疑および座談会
・登壇者(敬称略、五十音順)
1)天笠 志保(日本公衆衛生学会、東京医科大学公衆衛生学分野)
演題名 身体活動とがんの疫学研究~Past & Future~
2)大城 真理子(日本健康学会、沖縄県立看護大学)
演題名 乳房の異常に気づきつつも医療機関の受診が遅れるのはなぜだろう?
参加費 無料
申込方法 事前登録制:下記フォームより、お申込みください。
参加登録フォーム
申込期限 2022年3月1日(火曜日)
問合先 山本 琢磨(兵庫医科大学法医学教室)
shakai.wakate [a] gmail.com
主催 日本医学会連合 第4回社会医学若手フォーラム
タイムテーブル(予定):

17:30 開会挨拶・趣旨説明
17:40 演者1 天笠 志保(発表20分)
18:00 演者2 大城 真理子(発表20分)
18:20 全体質疑・小括
18:40 ルーム別の交流、アンケート、解散

※講演終了後、全体質疑(20分)、少人数のグループ交流(50分)を行い、随時閉会の予定です。前回はこのような場での出会いから共同研究へと発展したというお話も伺っています。

〇演者詳細

演者1 天笠 志保

所属 東京医科大学公衆衛生学分野

主な所属学会
日本公衆衛生学会、日本疫学会、日本体力医学会、日本運動疫学会、International Society for Physical
Activity and Health、American College of Sports Medicine

略歴
2015-2017年 東京医科大学大学院医学研究科医科学専攻(修士課程)
2018-2020年 東京医科大学大学院医学研究科社会医学専攻(博士課程)
2018-2021年 日本学術振興会特別研究員(DC1, PD)
2020-2021年 東京医科大学公衆衛生学分野 兼任助教
2021年-現職 東京医科大学公衆衛生学分野 特任講師
東京大学大学院医学系研究科公共健康医学専攻 健康教育・社会学分野(客員研究員)、早稲田大学アクティヴエイジング研究所(招聘研究員)。

演題名
身体活動とがんの疫学研究~Past & Future~

発表要旨
 身体活動ががんの予防や治療に有効であるというエビデンスが急速に蓄積されている。身体活動の疫学研究の歴史を紐解いてみると、1950年代におけるロンドンバスの運転手と車掌の心臓病に関する研究が最も有名である。一方で、1920年頃には、身体活動が多い職業に従事する者はそうでない者に比べて、がんの死亡率が低いという報告が散見されている。その後、身体活動の評価方法の進歩により、身体活動と健康アウトカムの関連(量反応関係)を検討した大規模な疫学研究の成果が数多く報告された。2020年に改定されたWHOの身体活動・座位行動ガイドラインでは、定期的な身体活動による特定の部位におけるがん(膀胱がん、乳がん、結腸がん、子宮内膜がん、食道腺がん、胃がん、腎がん)の発症に対する予防効果が示されており、また、がんサバイバーに対する身体活動の推奨も行われている。本発表では、これまでの主要な研究成果の整理を通じて、身体活動とがん研究の現状を概観し、今後の展望について考えていきたい。

演者2 大城真理子

所属 沖縄県立看護大学

主な所属学会
日本健康学会 日本看護科学学会

略歴
2004年 沖縄県立看護大学看護学部看護学科卒業
2006年 琉球大学大学院保健学研究科修士課程(保健学)修了
2006~2012年 雪ノ聖母会聖マリア病院、琉球大学病院 看護師
2017年 沖縄県立看護大学大学院博士後期課程(看護学)修了
2019年 Eötvös Loránd University(ハンガリー) 
修士課程(Health Care Policy, Planning and Financing)修了
2019年~沖縄県立看護大学 成人保健看護領域 助教

演題名 乳房の異常に気づきつつも医療機関の受診が遅れるのはなぜだろう?

発表要旨
 乳がん患者が乳房の異常に気づきつつも受診が遅れてしまう背景を明らかにする研究に取り組んでいる。乳がんは早期に発見され、治療効果が得られる場合、長期生存が見込まれるが、乳がん患者の約3割は乳房の異常に気づきつつも、医療機関を受診するまでに3か月以上の時間を要している。乳房の異常に気づいてから3か月以上の受診の遅延は生命予後に影響する。また、患者が受診するまでに抱える問題は、治療開始後のプロセスにも影響することから(例:治療中断など)、治療開始後の看護援助を行う上でも、本テーマに焦点を当てた研究を実施することは意義があると考えている。
 これまで、諸外国を中心に、乳がん患者の受診の遅れの関連要因について検討されてきたが、受診行動はその国の社会文化や医療資源の状況にも影響を受けることから、日本の社会文化を考慮した“遅れ”に関連する要因を明らかにしていくことが重要である。
 演者は、これまで300人ほどの乳がん患者に、直接話を伺いながら、受診が遅くなった者とすぐに受診した者を比較した量的研究、質的研究を実施してきた。その中で、乳がんかもしれないと疑いつつも、病院に行きたくても行けない程、時間的にも経済的にも困難な生活状況に置かれていることや、身の回りに頼れる人がおらず生きる希望がないこと、周りの人や状況を優先してしまい自分のことは後回しになってしまった女性の実情が明らかになった。
 また、調査を進める中で、沖縄本島と離島に居住する乳がん患者とでは、受診が遅れてしまう背景が異なる可能性が示された。特に、離島に居住する乳がん患者は、島に専門医が不在のため、直接、沖縄本島に出向く必要があることや、情報や相談の場が乏しい環境に置かれている。よって、現在は離島に居住する乳がん患者に焦点を当てた受診行動の研究に取り組んでいる。