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年頭のご挨拶

年頭のご挨拶

一般社団法人日本医学会連合
会長 門田 守人

 2022年の年頭に当たり、一言ご挨拶申し上げます。

 本年は、日本医学会連合/日本医学会の創立120周年、人で言えば大還暦を迎える特別の年に当たります。

 本会の活動は、明治35年(1902年)4月2日、第1回日本聯合医学会(後に日本医学会と改称)が上野の東京音楽学校において開催されたことに始まります。その後、4年毎に日本医学会総会を開催する自主独立の組織として活動を続けておりました。わが国が太平洋戦争に敗れた後、連合国最高司令官総司令部(GHQ)の指示により、日本医学会は日本医師会に統合(1948年)され、医学会総会の開催だけでなく、日常的に活動する組織となりました。2014年には、日本医学会の活動に加えて、一般社団法人日本医学会連合が発足し学術団体として自主独立の活動も開始し、本年で創立120年周年を迎えることになりました。

 この間、わが国は西洋文明の積極的導入、周辺アジア諸国への進出、太平洋戦争突入から敗戦、戦後復興からバブル景気、バブル崩壊から失われた30年等と種々の社会的変化を経験してきました。そして、現在、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミックに遭遇しています。創⽴120周年の節⽬であるこのタイミングで、わが国における近代医学の創成期からこれまでの歴史を今⼀度振り返り、真摯に評価・検証する必要があると考えます。そして、それを参考に、未来に向けてのあるべき⽅向性を模索することが、 我々に与えられた使命であると認識せざるを得ません。そこで、本年4月2日に120周年記念事業を開催することにしました。コロナ禍に鑑み、Web配信を中心にと考えておりますが、全ての加盟学会の会員の皆様にご参加いただき、未来に向け共に考え、語り合える機会としたいと考えております。

 さて、昨年も、一昨年に引き続きCOVID-19対応に終始した一年でした。2年間にわたるCOVID-19と近代医学の戦いと言えます。医療技術面で注目すべきは、僅か1年程度で、コロナウイルス・スパイクタンパク質に対するmRNAワクチンが開発され、実用化されたことが挙げられます。まさに近代医学の進歩の素晴らしさと言えます。しかし、この成果も一朝一夕に得られたものではなく、基礎的な研究成果の積み重ねの上で達成されたものです。医学研究の重要性を改めて認識させられます。一方、わが国の医学研究をさらに発展させるためには、研究費や人材育成など対応すべき多くの問題があると自覚しており、重要な課題として医学会連合としても取り組むことが求められています。更に、パンデミック対策では、技術革新のみならず、長期的視野に立った社会体制そのものの革新が必要と考えられます。パンデミックや災害等に対応できる医療体制改革のため、医学会連合では、昨年1月に「健康危機管理と疾病予防を目指した政策提言のための情報分析と活用並びに人材支援組織の創設」を提言しています。パンデミックが去ったとしても、次の危機に備える長期的視点を失わないことが重要だと考えます。

 この他にも昨年の出来事として、1月に核兵器禁止条約が発効しました。世界唯一の被爆国として、核兵器による生命・健康に対する甚大な影響を経験しているわが国は、何らかの使命を果たしていく必要があると思います。10月からは、イギリスで気候変動枠組条約第26回締約国会議(COP26)が開会されました。残念ながら、わが国は存在感を十分に示すことはできませんでした。また、オリンピックの準備の過程で、ジェンダー問題が話題になりました。ジェンダー平等を目指すオリンピック憲章の下でのことであります。もう一つ、我々アカデミアが懸念することとして、一昨年に日本学術会議会員候補者の6名が任命されませんでしたが、その状態は依然続いています。昨年は、わが国における物事の価値観あるいは優先順位の在り方が問われた年であったように思われます。

 このように昨年の事例を挙げてみただけでも、我々学術団体の姿勢が問われていることが少なくありません。本年は特に本会の創立120周年の節目の年であり、改めてわが国におけるアカデミアの責務を果たすべく努力していく必要性を痛感しております。皆様方のご理解とご協力をお願いしたいと思います。どうぞ、よろしくお願いいたします。