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年頭のご挨拶

年頭のご挨拶

一般社団法人日本医学会連合
会長 門田 守人

 2021年の年頭に当たり、一言ご挨拶申し上げます。
 昨年は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミックとの対峙が始まった一年でした。国を挙げての対応にもかかわらず、まだ収束の見通しが立っていません。また、日本学術会議会員候補者の一部が政府から任命されない事態が発生するという、アカデミアにとっては重大な問題が起こり、これも未だに解決には至っていません。改めて、学術と政治のあるべき関係を考える時が来ていると言えます。

 突然襲ってきたCOVID-19ですが、歴史を遡ると14世紀のペスト、19世紀のコレラ、20世紀のスペイン風邪など、人類の歴史では同様なことが起きています。これからも繰り返されることは疑う余地もありません。これを前提に、今後の社会体制作りを考えることが必要です。
 2009年のH1N1インフルエンザの大流行や、2011年の東日本大震災時の原発事故による健康危機の経験を機に、諸外国では既に設置されているCDC(Centers for Disease Control and Prevention 疾病予防管理センター)機能がわが国にはないことから、日本医学会は「日本疾病予防情報センター(Japan CDC)創設に向けての提案」をまとめ、かつて2013年4月に安倍前首相に手交しましたが、実現には至らないままでした。COVID-19に際しては、2020年4月に緊急提言「進行する医療崩壊をくい止めるために」を日本医学会連合としてまとめ、安倍前首相に手交して喫緊の課題への対応を求めました。現在、第3波の中で感染者数が増加の一途をたどり、さらに感染力の高い変異株の出現等と、予断を許さない状況に陥っています。
 まずはこの状況を収束させることが課題であるものの、大局的で長期的な問題解決を考えることもアカデミアの使命と考えます。そこで、パンデミック等緊急事態に対応するシステム・イノベーションが必要と考え、「健康危機管理と疾病予防を目指した政策提言のための情報分析と活用並びに人材支援組織の創設」を年初に公表します。

 情報を科学的に分析し、その結果に基づいて明確な方向性の政策決定を下し、国民に理解できるように具体的に提示することが、パンデミック対策はもちろん一般的に民主政治の基本であることは言うまでもありません。COVID-19対策において、「科学的エビデンス」が話題になりましたが、わが国では科学的思考が国全体で希薄になっているように感じられます。
 このような時期に、日本学術会議会員候補者の任命拒否問題が明らかになりました。日本学術会議は、第二次世界大戦に突入し敗北した反省から設立されたもので、第1回総会(1949年)における決意表明では、「これまでわが国の科学者がとりきたつた(*)態度について強く反省し、今後は、科学が文化国家ないし平和国家の基礎であるという確信の下に、わが国の平和的復興と人類の福祉増進のために貢献せんことを誓うものである。(*原文のまま)」と謳われています。さらに、日本学術会議法第3条では、「日本学術会議は、独立して左の職務を行う。1 科学に関する重要事項を審議し、その実現を図ること。」と独立性が担保されています。我々学術団体は、「科学が文化国家の基礎である」との学術会議法の理念を深く理解し堅持することが、民主政治の維持に必須であると考えます。
 日本医学会連合は、「医学に関する科学及び技術の研究促進を図り、医学研究者の行動規範を守ることによって、わが国の医学及び医療の水準の向上に寄与すること」を目的とした日本の医学界を代表する学術的な全国組織の連合体です。私たちの活動の本質は、何事においても真理を探究することであり、決して一部の利害や損得が目的ではありません。この立場に立ち、日常のあらゆる課題・難題に対して科学的に正しいと考えられる方向性を示し、自ら行動することが私たちの社会的責務と考えております。
 本年も、皆様の一層のご理解ご協力をお願いいたします。

 なお、日本医学会連合は、1902年4月2日に日本聯合医学会(後に日本医学会と改称)として創設以来、来年には創立120周年(大還暦)を迎えます。明治以来、日本の医学・医療の近代化を推し進めてきた先人たちの活動を振り返り評価・検証し、これから未来に向けてどう活動を進めていくかを考えるため、日本医学会120周年記念事業(「日本医学会120年史」の編纂、「未来への提言」の取り纏め、2022年4月2日の記念式典開催)を企画しております。これにつきましても国民の皆様、加盟学会の皆様のご参画とご支援をお願いいたします。