診療ガイドラインと保険収載の関係性に関する提言
診療ガイドラインと保険収載の関係性に関する提⾔
⼀般社団法⼈⽇本医学会連合
診療ガイドライン検討委員会
委員⻑ 南学 正⾂ 東京⼤学
担当副会⻑ ⾨脇 孝 ⻁の⾨病院
委員 稲垣 暢也 京都⼤学
委員 苛原 稔 徳島⼤学
委員 ⼤内 尉義 ⻁の⾨病院
委員 北川 雄光 慶應義塾⼤学
委員 ⾹美 祥⼆ 徳島⼤学
委員 曽根 三郎 徳島市病院局
委員 中⼭ 健夫 京都⼤学
委員 ⾺場 秀夫 熊本⼤学
委員 平⽥ 公⼀ JR札幌病院
委員 三⾕ 絹⼦ 獨協医科⼤学
2022年11月30日
診療ガイドラインと保険収載の関係性に関する提言
Minds 診療ガイドライン作成マニュアル2020では、診療ガイドラインは 「健康に関する重要な課題について、医療利用者と提供者の意思決定を支援するために、システマティックレビューによりエビデンス総体を評価し、益と害のバランスを勘案して、最適と考えられる推奨を提示する文書」として定義されている。
診療ガイドラインを保険診療の枠組みに限定することは、実効的なガイドラインとする強みがある。しかしながら、診療ガイドラインの改定の期間が各々のガイドラインで異なり、医療の進歩が速い現在ではガイドライン発表後に新しいエビデンスが出され、そのエビデンスに基づくガイドラインの更新は次期改定の際に正式に行われる場合があること、また、保険収載に至るまでには一定の時間がかかり、更にエビデンスのすべてが保険診療として認められるとは限らないことから、診療ガイドラインで示す推奨診療内容と保険収載が必ずしも一致するわけではない。
このため、診療ガイドラインは各学術組織の適切な見識の下で学術的姿勢に徹し患者の益と害のバランスを考慮して記載されるべきで、診療報酬制度に制限されるものではない。
ただし、保険診療の枠組みに入っていない内容を診療ガイドラインで推奨する場合は、診療報酬の対象となっていない事実とその背景に配慮した記載をするべきである。
なお、保険収載されている医療行為は膨大で、必ずしもランダム化比較試験をはじめとする強固なエビデンスに基づくものではないものもある。求められる医療行為には、その危険性や費用、社会からの必要性なども考慮すべきであり、ガイドラインで推奨されていないからといって、保険収載に適さないわけではないことを認識することも重要である。

