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第2回社会医学若手フォーラム

盛況にて終了いたしました。
ご参加のいただいたみなさまありがとうございました。

第2回社会医学若手フォーラム参加者募集

開催趣旨

 日本医学会連合社会部会の若手リトリート2019は、分野の異なる加盟団体からの参加者により、活発で積極的な会合が開催できました。引き続き、2021年度に若手リトリートの「年会」を開催予定です。それと同時に、限られた参加者による「年会」だけでなく、「持続的に」、「開かれた」交流会を開き、社会部会研究者を中心とした研究ネットワークを拡大していくことは、極めて有意義なことと思われます。

 社会医学は、医療を中心とした社会の様々な現場から、研究室・実験室で行う健康・医学に関わる社会医学の基礎研究まで、多様な研究分野から成り立っています。それぞれの持ち場において活動する研究者が、各自の問題意識を互いに共有し、協働することで、より大きな成果が期待される研究領域です。同時に、こうした「若手」の活動に共感する「年長」研究者との交流も極めて有用です。

 そこで、若手リトリート2019に集った参加者を軸として、相互理解を深め、医療・健康上の課題解決を志す他の多くの仲間を増やして共同研究を促進していくために、また、「社会医学」の若手リトリートの研究ネットワーク形成という当初の目標を目指すことのために、社会医学若手フォーラムを開催することとなりました。

 その第1回を6月26日にWeb開催しました。3名の講演についての活発な意見交換が行われ、その後の参加者同士の交流会でも新しいつながりができました。

 第2回は8月27日を予定しています。今回も新しい刺激を受ける良い契機になることを期待しています。ぜひ周りの方々にもご案内ください。人々の命と健康に関わる研究者の幅広い交流と共同研究促進を志す多くの方々のご参加をお待ちしております。

開催概要

日本医学会連合第2回社会医学若手フォーラム
日時 2021年8月27日(金)17:30~19:30
場所 オンライン(Zoom)
対象 社会医学若手フォーラムの趣旨に賛同する研究者
内容 登壇者2名による自己紹介・研究紹介・質疑および座談会
・登壇者(敬称略、五十音順)
1)愼 重虎(京都大学 大学院医学研究科 医療経済学分野)
2)和田 聖哉(大阪大学大学院医学系研究科 変革的医療情報システム開発学寄附講座)
参加費 無料
定員 100名
申込方法 事前登録制:下記フォームより、お申込みください。
参加登録フォーム
申込期限 2021年8月25日(水)
問合先 山本 琢磨(兵庫医科大学法医学教室)
tk-yamamoto [a] hyo-med.ac.jp
主催 日本医学会連合 第2回社会医学若手フォーラム

タイムテーブル(予定):

17:30 開会挨拶・趣旨説明
17:35 演者1 愼  重虎(発表20分)
17:55 演者2 和田 聖哉(発表20分)
18:15 演者別の質疑
18:45 全体質疑・小括
19:05 ルーム別の交流、アンケート、解散

※講演終了後、演者別に小部屋を設定し20分ほど自由にディスカッションしていただきます。その後、全体質疑(20分)、少人数のグループ交流(25分)を行い、随時閉会の予定です。前回はこのような場での出会いから共同研究へと発展したというお話も伺っています。

〇演者詳細

演者1 愼 重虎

所属 京都大学 大学院医学研究科 医療経済学分野
主な所属学会 医療経済学会、日本公衆衛生学会、日本医療・病院管理学会、日本疫学会
略歴
歯科医師(韓国)
2016年4月  京都大学 大学院医学研究科 医療経済学分野 入学
2018年3月  専門職修士学位(MPH)取得
2018年4月  博士後期課程 進学
2021年3月  社会健康医学博士(DrPH)取得
2021年4月~  京都大学 大学院医学研究科 医療経済学分野 助教

演題名 DPC、レセプトデータなどのデータベースを活用した研究紹介

発表要旨
 近年、医療系データベースを用いた疫学研究が増えている。日本でも保険請求のためのデータであるレセプトデータ、DPCデータを活用した研究が多くなっている。特にDPCデータには保険請求のための情報に加え、厚生労働省の「退院患者調査」のための情報も含まれており、研究、モニタリングなど、様々な目的で活用ができる。
 京都大学医療経済学分野ではDPCデータを用いて、医療の質向上のためのQuality Indicator/Improvement Project(QIP)を運営している。Quality Indicator(QI)とは、診療のプロセス・成果や経済性を反映する客観的な数値指標(パフォーマンス指標)であり、診療ガイドラインなどに基づいて作成しているQIの測定、フィードバックを通じ、医療の質の向上が期待される。
 DPCデータは、毎月作成されるため、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の医療への影響を迅速に把握することも可能である。QIP参加病院からのDPCデータの解析を行い、最初の緊急事態宣言があった2020年5月のDPC病院の診療報酬収入減少が前年の14%で、COVID-19患者の受け入れ病院においてはさらに大きく減少しており、COVID-19重症患者のための診療報酬の臨時的な引き上げを上回ることを示した。
 厚生労働省では、2009年度からの電子レセプトを格納しているNDBを構築し、そのデータを研究者に提供している。我々の研究室ではNDBを用い、医療圏レベルの医療システムについてのQIを開発し、厚生労働省、自治体、医師会にフィードバックしている。
 レセプトデータには、歯科のデータも入っており、医科レセプトと結合した解析により、糖尿病患者における歯周疾患管理が医療費、合併症の発症、重症化との関連についても検討ができる。また、継続的に収集されるデータのため、縦断的な分析も可能である。某自治体の4年分の医科・歯科・調剤レセプトデータを用いた解析し、糖尿病患者における2年間の定期的な歯周疾患管理は3年目の医療費の4%減少と関連があったことを示した。
 医療系データベースを用いた疫学研究は、研究のために収集したデータではないため、臨床検査値などの情報が入っていないことなどが問題とされている。しかし、臨床研究と比べ、サンプルサイズが大きい点、適格基準がないため、幅広い属性の対象者に対しての研究ができる点、新規感染症などの影響を迅速に把握できる点など、データベース研究ならではの長所も多い。IT技術の発達に伴い、いわゆるビッグデータからより精度の高い分析が可能になりつつあり、医療系データベースの今後さらなる活用が期待される。

演者2 和田 聖哉

所属 大阪大学大学院医学系研究科 変革的医療情報システム開発学寄附講座
主な所属学会 日本医療情報学会、日本小児科学会
略歴
2009-2011年 国際医療福祉大学病院研修医
2011-2017年 自治医科大学附属病院 小児科
2017-2021年 大阪大学大学院医学系研究科博士課程 医療情報学(単位修得退学)
2021年- 現職

演題名 鑑別診断支援を実現する「人工知能」の開発はなぜ難しいのか?

発表要旨
 現在の人工知能技術の根幹を成す「深層学習 (Deep Learning)」という専門用語が一般メディアでも聞かれるようになりました。皆様の専門領域でも、「機械学習 (Machine Learning)」をタイトルに含む原著論文を目にする機会が多くなったのではないでしょうか。特に画像識別分野では人間に匹敵する性能を持つモデルが開発され、一般ドメインのみならず医学ドメインでも実応用されるレベルにまで到達しています。
 私は臨床に従事する中で、データからパターンを学習して予測を行う機械学習の可能性に興味を持ちました。その利活用と課題について医師の視点から研究したいと考えて医療情報学を大学院で学びました。研究テーマは自然言語処理による診断支援システムの構築です。まだ道半ばではありますが、本日は私の研究課題を題材に、人工知能技術の医療応用に関して皆様と自由に意見を交わすことが出来ればと考えています。本発表に関係のない、他の機械学習に関する素朴な疑問なども歓迎します。
【概要】
1.鑑別診断支援システムの構成
専門家の知識による構築(エキスパートシステム)がうまく行かない理由から、システム全体を機械学習モデルで構築するリスクについて解説します。
2.自然言語処理の応用
自然言語処理の目的は、非構造化データ(フリーテキスト)の構造化です。特定のタスクは定式化され、それを効率的に解決するための研究がさかんに行われています。鑑別診断支援システムの知識データベースを構築するために重要な応用タスクには、以下の3つが挙げられます。深層学習、その中でもTransformerという技術がもたらした影響についても言及します。
・固有表現認識
 …対象文字列の特定と抽出を行います。
 →これだけでは構造化は出来ません。
・関係抽出
 …抽出した文字列同士の関係を分類します。
 →ようやくTable Data (=構造化データ)に変換できるようになります。
・正規化
 …表記ゆれに対して、統制語(見出し語)を設定して集約します。
 →検索の利便性を高めるには必要な処理です。
3.今後の展望
 知識データベースを構築するだけでも多くの課題が存在します。どのような診断支援システムを目指すべきなのか、臨床医の視点から説明します。